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2012年12月18日火曜日

16. アリ



仕事を終え、ウィーンは部屋に戻っていた。ロジの姿はなかったが、最近では珍しいことではないので、気に止めなかった。 

 「どうしたじゃないですよ!」

画面に映し出された青年が、先ほどの女子学生と同じ言葉を口にする。 

ウィーンは、コーヒーを入れつつ、PCを操作し、ドアを開けてやった。

「ウィーンさん、あなた、また面倒事を僕に押しつけたでしょう」

入ってくるなり青年はそんなことを言う(“コーヒーなんて飲んでないで!”とどやされるがウィーンはテーブルに着いた)。

「ん?」

彼の名前はアリ、先ほどの学生を向かわせた研究室の準教授であった。

「あれの所為で、4時間も議論攻めですよ。最近の学生は、勉強熱心なのかバカなのか・・・」
「はは。そういうことを言うもんじゃないよ」
「そう言うなら自分で相手すればよかったじゃないですか!」
「すまない。少し夢中になっていることがあってね」

アリはため息をつくと、椅子に座る。

「コーヒー飲むかい?」
そういい、新しいコップへとコーヒーをつぐ。
「ありがとうございます」
いまいち気が乗らないような声で返事をする。

「それはそうと、外で何か騒ぎがあるみたいです」

一口飲むと、一瞬前の表情をころっと変え、彼は、興味のある話題を話す。一緒に研究をした時もそうだったが、何があろうと、すぐさま新しい好奇心へと向かうところが、ウィーンは好きだった。

「騒ぎ?」

「はい。セキュリティトップキャビネットも街に出てるみたいです」

「町って、セントロのことかい?それは珍しいね。何年ぶりだい」

セントロにはトップキャビネット各分野の本部が在しているため、ほとんど犯罪は起きない。オリジンの中核を担うトップキャビネットの眼下で、裏をかこうという勇者は到底現れないのであった。

「セキュリティもびっくりですよね。結構あわててるみたいです」

「いったい何が起きてるんだい?」

「それは―――」

不意に、どよめきを伴う人の声を、つけたままのインターホンが拾う。―――あいつ、何考えてるんだ―――たいへんなことになってるぞ―――おもしれえ、もっとやれ―――。

「例の騒ぎと言うことか?」
「行ってみましょうか」

2人は、ソーシャルスペースへと向かった。

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