そこでは、10何人かの軽い人だかりができていて、画面には、どうやら、騒ぎの中心となる場所が映し出されていた。
現場は統合ワープシステムのようで、セキュリティキャビネットが、その一部を囲うようにして配置されている。少なくはない人数である。
さらには、飛行車(空中を浮遊できる車)や、その他飛行型ロボやサイボーグも出動しているようで、事態は大きいように見えた。
「世の中には、頭のおかしいやつがいるんですね」
アリがいった。
「いったい何が起こっているんだ?」
うおお、と歓声が起こった、ひやひやしているものもいれば、にやにやと笑い、面白がっているものもいるようだ。画面には、ワープシステムはるか上部が映し出される。
そこに映っていたのは、横と縦にのびる柱から柱へ、飛び交うロボやサイボーグを華麗によけながら、壁をよじ登る何かであり―――少なくともオリジンであることはわかった。
とはいえ、遠目から見ているだけで、並ではない運動神経・身体能力の持ち主であるとわかり、こんな動きは一生に一度見たことがあるかないかだとウィーンは思った。
「もう3合目くらいまで登ってるんじゃないのか?どうなっている」
体格の大きい男が面白がって笑った。
「セキュリティに捕まるのがオチだろ・・・」
「危険すぎる・・・なにをするつもりなんだ・・・」
そこにいるものは、ただその男の動きに見とれていた。柱から柱へ、蜘蛛のように飛び移り、くるくると素早いロボットたちの攻撃から身を逃れる。
一つのパフォーマンスのようであった。
ロボや飛行車は、どれもレーザーを放っているが、全てのレーザーは彼に当たることはなく、鏡のような外壁に反射されていた(“あの壁、材質はなんだ”一人の科学者が叫んでいた)。
画面下には説明が映っている(“謎の男、ワープシステムを登る。セントロへ注意喚起”)。
何が目的なのかウィーンにもわからなかったが、ただその男の動きを見ていた。そのとき、1台の車が彼へと急接近し、レーザーを放とうとする。
が、彼はその一瞬で、宙へと蜻蛉返りをし、車へと飛び乗ると、それを踏み台にするようにしてジャンプした。
車はバランスを失い、一時下降する。
歓声が上がった。
カメラが切り替わり、男の顔が映る。
カメラは、1センチほどの球体に羽根が付いた、飛行型のカメラによって撮影されている。今や家庭でも使用されており、個人を認識し、対象を追い続けて飛び回るという、悪用されかねない代物である。
しかし、そんなことはどうでもよかった。
何かを狙っているかのような表情をし、車を一瞥した後、彼は再び、ロボをよけながら進む―――ロジ。
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